主人公はオットーボックのM2、『ルルドの泉で』

車椅子がたくさん登場するというので、『ルルドの泉で』(監督・脚本ジェシカ・ハウスナー、2009年オーストリア・フランス・ドイツ)を見に行った。

ルルドはフランスのピレネー山脈のふもとの村で、病を癒すとされる泉があり、毎年、600万人が訪れるカトリック教会の聖地だ。

物語の主人公が参加した巡礼ツアーの一行は40人ほどで、うち9名が車椅子ユーザーだ(ひとりは電動車椅子)。

ツアー客のお世話や介護をしているのが、男女各10名ほどで、計20人のマルタ騎士団のひとたち。これら、総勢60名が食堂で順番に席につくところから物語は始まる。その後しばらくは、ルルドのいろいろな情景がドキュメンタリー映画のように展開される。

主人公の女性は多発性硬化症で四肢麻痺という設定。オットーボック社製のM2というモジュラータイプの車椅子を使っている。ベッドに移乗する場面では、介護のひとがトグルブレーキをかけ、アームレストを跳ね上げるなど、車椅子の扱いが丁寧に描写されている。

主人公が巡礼中に立ち上がりができるようになった場面では、足台が邪魔で立ちにくいけど、どうするかなと見ていたら、ちゃんとスウィングアウトさせて立った。しかも、片側だけのスウィングアウトで、実にリアルな考証がされていた。

映像の中で特定できた車椅子メーカーは、オットーボック社のほかにMeyra社がある。どちらもドイツの有力な車椅子メーカーだ。日本では、北欧やドイツ、スイスなどの車椅子メーカーは知られているが、フランス製車椅子はなじみがない。フランスには輸出できるような規模の車椅子メーカーは無いのかも知れない。唯一、特殊なスタンディング車椅子を製造しているLifestand社の名前は日本でも知られているが、このメーカーも、先年、買収されてスウェーデンのPermobil社に傘下になってしまった。

物語の中心になる巡礼ツアーの一行以外の車椅子もたくさん出てきて、二つの事に気づかされた。

まず、ブレーキ。映画に登場する車椅子の人はほとんどすべて、介助者に押されている。日本だとこういう場面で使われる車椅子の押し手にはブレーキレバー付きのものが多いが、映画の中で私が気づいたのは一台だけだった。

二つ目は、車椅子の後輪の直径。我が国には「手押し型」や「介助用」という車椅子の分類があり、後輪が小車輪(12インチから18インチ程度)のものが該当する。これに対し、普通型の車輪径は22インチか24インチである。車輪のサイズだけで機能的な分類をする意味は少ないと思うのだが、それはさておき、映像には小車輪のいわゆる「介助型」車椅子は一台も出て来なかったように記憶する。

試しにgoogleで「wheelchair」と「車いす」で画像検索してみた。wheelchairでは小車輪の車椅子の画像が少なく、車いすでは押し手にブレーキレバーのついた画像が多かった。

このほか、映画には、日本の人力車のような折りたたみ式の幌がついた三輪式のものが出てきた。これは、周辺にある宿坊(でいいのかしら)からルルドの泉への往復に使われているもので、ルルド紹介のサイトにある写真を見ると、ずらっと並んでいる。さらに、ネットを探ると、1958年撮影の写真にも同様のものがあった。

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