楽しむ“車いすのマティアス”

仕事場の本の整理中、目にとまった『車いすのマティアス』(トーマス=ベリイマン、偕成社、1990年)。6歳になる脳性まひの障害をもつスウェーデンのマティアスさんの日常を写真と文で綴った子ども向けの本だ。

車椅子の学校(同書より)

初 版一刷だし、購入したのはたぶん本が出てすぐだったろう。原題を見ると、“Kul på hjul med Mathias”だ。英語だとFun on wheels with Mathiasといった意味になり、邦題のサブタイトル「脳性まひの障害とたたかう少年」とはニュアンスが違う。

原 著も90年の出版だが、マティアスさんはすでに座面の昇降や立ち上がり機能のある先進的な電動車椅子を使っている。家族みんなでプールに行き、お父さんに 誘われれば、地下鉄に乗ってマクドナルドに寄ったりもする。最近では、日本の駅でも電動車椅子のひとを見かけるのはそう珍しくないことだ。けれど私は、電 動車椅子の子どもは一度も見たことがない。

地下鉄に乗って(同書より)

幼稚園に通うマティアスさんは、理学療法士による訓練だけでなく、パソコンの練習や乗馬、歩行器 を使ってのスケートなど充実した日々を送っている。「車いすの学校」にも行く。ここでは他の車椅子ユーザーの子どもと一緒に遊んだり、スラロームの練習を したり、楽しみながら車椅子や電動車椅子の操作を習得できる。こうしたプログラムは日本にはないうえ、電動車椅子は小学校の高学年にならないと支給制度の 対象にならないとする厚生労働省の指針がある。このため、親やセラピストが学齢前から電動車椅子を使わせたいと思っても、制度の壁が厚く、かといって高額 なので自費で購入することもならず、その結果、使い始めるのが遅れてしまう。

欧米の先進国では、電動車椅子が必要となる子どもにはできるだけ早い時期から使わせることが、その後のよりアクティブな人生につながるという認識が広がっている。実際、1歳半から2歳位で電動車椅子を使い始めるのも普通になりつつあるようだ。

歩 き始め、いろいろなことに興味を持ってモチベーションを高めてパーソナリティーを発達させて行く時期に、ひとりで動けない子どもがいる。その子どもに適切 な移動手段を提供することの大切さは、専門家でなくても容易に想像できる。前述の厚労省の指針が出た時期は分からないが、操作性や安全性の向上した子ども 用の電動車椅子が入手できる現在、早急に見直すべきではないか。マティアスさんが電動車椅子に乗っていた年代を確認して、改めて強く思った。

 

【参考】北米リハビリテーション工学協会の発行した文書: RESNA Position on the Application of Power Wheelchairs for Pediatric Users

 

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    車椅子や座位保持装置にまつわる情報、仕事のなかで気づいたことなどを、こっぱ舎にかかわる人たちが折々に紹介していきます。こっぱ(木っ端)=鉋(かんな)の削りくず。転じて、取るに足らないもののこと。そんなkoppaも壮大な宇宙=kosmosの中にあり、こっぱの中にも小さな宇宙がある。そんな思いでkoppasmosと名づけました。

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