当事者の家族が描く「ぼくうみ」を観て

先日、映画「ぼくはうみがみたくなりました」を観た。神奈川県湘南地域が舞台の自閉症の青年の物語である。

知人の誘いで気軽に参加したが、保健福祉事務所と社協主催「障害相談員研修 市民福祉大学」ということで、手話通訳とOHP要約筆記がつき、会場は満員だった。

映画終了後は、企画・原作・脚本を手がけた山下久仁明さんの講演があった。山下さんは、もともとバラエティ番組やアニメの脚本家。本編も創作ドラマで、ドキュメンタリー色はない。切なくも暖かいロードムービーだった。

主演の伊藤祐貴君は、500人の中から選ばれた新人。当時大学生だったが、都内の通所施設に2か月通って、双子の自閉症の青年に密着し、オーディションでは圧倒的な表現力により、満場一致で主役を得たそうだ。

その他大勢の応募者たちはそれはもうさまざまな「自閉症」を表現し、這いまわったりうめいたり新規の症状続出、改めて自閉症がいかに理解されていないかがうかがえた……と、山下さんはユーモラスに話す。

劇中にも描かれているが、自閉症の実態は案外知られていない。「自閉」という語感から心を閉ざしたような「心の病気」イメージでとらえられがちなのだという。自閉症の人の行動を目にして、すぐそれとわかる人は非常に少ないそうだ。

当事者と家族たちは、この社会的認知の少なさに悩んでおり、映画を通じて自閉症を知ってもらうことが最大の目標とのこと。

 

 “町中でも、自閉症を知っている人の目線はすぐわかります。「あ、ここにもいたいた!」と暖かい目を向けてくれます。それ以外のほとんどの人は「まずい所に行き合わせてしまった……」という顔をしますね。”

 

主人公の青年「淳ちゃん」こと淳一君は、実は山下さんの今は亡きご長男がモデルだ。

わが子が自閉症と判明してから、幼児向けアニメを書く気が失せてしまったという山下さんは、その後、地域で障害児放課後保育施設を立ち上げ、現在も続けられている。同時進行で本編の原作を執筆、映画化に向けてゆっくりとふくらませていく。自主製作資金のためWEB上で募金を始めようとした矢先、息子さんを鉄道事故で失ってしまう。中学2年生だった。

映画化の話は走り続けた。その後の3年間でできあがった映画が「ぼくはうみをみたくなりました」通称「ぼくうみ」。2009年、東京都写真美術館ホールを皮切りに全国数館で劇場公開された。その後は自主上映会が今も続いている。

“不思議なことに息子と役者の伊藤君は顔がそっくりで、小さい頃の写真は見分けがつかないほど似ているんです。

始めは息子のために映画を作っているつもりだった。けれど気がついたら息子が僕に映画を作らせてくれたていた。”

 

淳一君の母親役の石井めぐみさんが自然な存在感で画面を和ませている。

そのほか幼稚園などの入学拒否や受入、障がいのある人の「きょうだい」の心情などが、さりげなく語られている。描き手が当事者の家族ならではの大切なリアリティーだ。家族、仕事、若者、生活、社会……多様で、あたりまえで、心配で、かけがえのない普通の日常。山下さんのお話は観終わった映画の魅力をさらに深くしていた。

 

現在山下さんは「ぼくうみ」の自主上映会で全国を廻っている。今年はニューヨークにも足を延ばした。今後は、被災地方面の町々の親の会などによる上映会を企画している。そうしつつ続編をあたためているのだそうだ。淳一君はカナータイプという重度の自閉症だが、続編では軽度の人を描いてほしいという要望が高いらしい。多くの人に知ってもらうために。どんな人たちなのか、ぜひ知らせてほしいと思う。

 

劇中、肢体不自由の若い女性が室内でくつろいでいるシーンがあり、本体色グレー、シートパッド色レインボーレッドのクッションチェアLLサイズに居心地良さそうに座ってました!! 傍らで姉にマッサージをしてあげている妹にも楽そうで、クッションチェアは介助者にも使い心地がよさそうだなと再認識!

このシーンで気合が入ったのは、会場の中で私だけだったかもしれません。

 

ぼくうみ

いつか機会があったらみて下さい。黄色いホンダのステップワゴンが目印です。

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