OHP要約筆記という情報伝達手段

「ぼくうみ」講演会で、初めて要約筆記を見た。

OHP(overhead projector:オーバヘッドプロジェクター)要約筆記というもので、専用のサングラスと黒い指無手袋をした3人が前後からOHPを挟んで座り、2人が司会や講演者の話の内容をフェルトペンで透明なロール状のシートに書き出してゆく。あらかじめ、固有名詞や、キーワードになる言葉などを別のシートに書いたものが用意されており、話題がそこに及ぶと3人目のひとが手際よくそれを文中に挿入する。彼女はまたロールを動かして行送りの役割も担っている。

画面を見る限りワープロ入力画面のようだ。ただしすべて人の手で行われる。あらかじめ用意されたキーワードは単語登録の一発変換と同じく作業の短縮と円滑化に生かされる。

次にやや長い文章が話される。すると文章の終わらないうちに、2人はほぼ同時に手を動かし始める。ひとりが一つの文章の前半を一行目に書いている時、ふたり目の人が後半を書くのである。

たとえば「これからみなさんにこの映画のきっかけについてお話します」という講演者のことばが終わるか終らないうちに、

「これからみなさんに」とひとり目が、

「きっかけについて」とふたり目が、

同時に書き出していく。書き終わった時、一つの文章ができあがっている。この息の合った連携は、ワープロにはできない技と思われた。

司会も講演者も手話通訳や要約筆記に対して、ゆっくり話したり間を置いたりといった配慮は一切しない。それゆえに全文を完全筆記するということはないが、かなりの分量が文字化されていた。適切な漢字も入り、略すことなく読みやすい文字であった。3人は作業中必要に応じて声をかけあっていたが、それはまったく講演を邪魔するものではなかった。

要約筆記は、中途障がいなど第一言語が手話でない聴覚障がい者への情報伝達手段だそうだ。聴覚障がいイコール手話のイメージが一般的と思うが、手話を使う方は実は全体の約15%ほどであるらしい。このことは自閉症と同じく案外知られていない。

聴覚障がいで、母語が手話である人、聞こえる人で母語が手話の人(手話を使う両親の子ども)たちは、あらためて「日本語」を学習して体得する。彼らにとって日本語は二番目の言語なのだそうだ。

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